21世紀世界の先端建築を渉猟する
現代世界の比較的若手建築家の先端的最新作を紹介する

淵上正幸(建築ジャーナリスト)

2018.04.27

Wellness Plesnik(Logarska Valley, Slovenia)
ウェルネス・プレスニック(スロベニア、ロガルスカ・ヴァーレイ)

雄大な自然と対話するヘルス・クラブ

スロベニアの若手建築家を代表するエノタは、温泉施設、リゾート・ホテルなどの建築タイポロジーを得意とする建築家集団である。これはおそらく、風光明媚なスロベニアのランドスケープが成せる業と思われる。

「ホテル・プレスニック」は、自然公園の中にある80年間の伝統を誇る家族的なブティック・ホテル。氷河谷の端部に位置するという非常に稀な景勝地にあり、雄大なカルミック・サヴィンジャ・アルプスの美しい峰々をエンジョイできる。その中のロガルスカ・ヴァーレイは、ヨーロッパで最も美しい谷間のひとつといわれてきた。自然の驚異的な美しさこそが、「ホテル・プレスニック」にある「ウェルネス・プレスニック」のリノベーションを可能にした主因であろう。

「ウェルネス・プレスニック」はヘルス・クラブのようなものだが、マシンなどはなくプールやサウナで体を癒すわずか560m2のクラブ。元々あった小さなオリジナルのプールが、建物正面にある日光浴デッキに開かれた形で使用されていた。新しいプログラムに必要なスペースを確保するために、既存の大きなプールは部分的にワール・プールに置き換えられた。

他方谷間への景色に近いかつてのプール・シェルの一部は再構築されて、暖炉をフィーチャーしたサンクン(沈んだ)円形休息エリアとなった。外部のサン・デッキはスイミング・プール付きで拡張された。それは削除された内部のプールを補い拡張している。また水面の輝きが、さらに美しい景色にアクセントを添えている。

新しいプールは矩形で、そのため周辺ランドスケープというよりはむしろ、建物の延長という感じになっている。インテリアの休息エリアに暖炉を設けることに対し、外部プールのコーナー部には、円形の小さな暖炉を中央に配したリラクゼーション・エリアが配された。そのスペースに座ると、水と火というふたつの基本的な自然エレメントが対話を生み出し、美しい周辺山脈の信じがたい背景にアクセントを添えて感動的なシーンを演出する。

「ウェルネス・プレスニック」には、ローカルな材料を集中的に使用してデザインされた。うねるような内壁は、際立ってぎこちなく不均一な既存スペースの施工デザインによる。余裕のある内部の配置は、空間を分割して不規則性を隠し、谷間方向に向けて終結する流動的な空間を形成している。

小石をあしらった内壁面は、物理的に外部へと変容していき、視覚的にサン・デッキを、サウナ部分、中央ウェルネス・スペース、およびエントランス・ポータルの3つに分割している。ファサードの開口部を拡大してガラス張りとしたために、さらに「ウェルネス・プレスニック」のインテリア空間を、ピクチャレスクな外部空間につなげている。素晴らしい建築エレメントの数々によって、増築部分は純粋性を保ち、そのためホテルの付属棟というよりもむしろ、美しい近隣ランドスケープに溶け込んでいる印象が素晴らしい。

プール前のサン・デッキ。大きなガラス開口部の中はサンクン円形休息エリア。
外部サン・デッキとサンクン円形休憩エリアの繋がり。
サンクン円形休息エリア全景。正面奥は円形プール。
暖炉を中心にしたサンクン休息エリアは居心地満点だ。
休息エリアから外部を見る。
円形のワール・プール。
地下のサウナ・ルーム群。
夜景の休息エリアを見る。左手奥はサウナ・エリア。
プールに浮く暖炉付きのリラクセーション・エリアからは幻想的なロガルスカ・ヴァーレイの美景を楽しめる。
旧地下&1階平面図 / 新地下&1階平面図
旧立面図 / 新立面図

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