2022.08.04建築

21世紀世界の先端建築を渉猟する 第52回
Ranging Over the 21st Century World Architecture (#52)

淵上正幸(建築ジャーナリスト) / Masayuki Fuchigami(Architectural Journalist)

BEEAHグループ本社
BEEAH Group Headquarters

シャールジアのアルサジャー砂漠に佇む「BEEAHグループ本社」は砂丘に埋もれたように低く横臥している。

BEEAH グループ新本社

建物はアラブ首長国連邦のシャールジャ首長国にある。ザハ・ハディド・アーキテクツのデザインによる「BEEAH グループ新本社」は、ソーラー電池アレイをエネルギー源とし、LEEDのプラチナム認証を受けた次世代テクノロジーを装備している。さらにカーボン・ニュートラルを遂行し、グループ会社における未来型ワークプレイスの、新しいベンチマークとなる経営&管理センターを目指している。

サステイナビリティとディジタリゼイションという2本柱の戦略により、BEEAHグループは6つの主要産業をカバーしている。すなわち、ゴミ処理マネージメント、リサイクル、クリーン・エネルギー、環境コンサルティング、教育、グリーン・モビリティである。

本社はBEEAHグループにとっての最新のマイルストーンとなっている。というのは、シャールジャや世界にとってのイノヴェイションを開拓していき、グループが新しい未来に不可欠な産業へと多様化していくベースを確立する。新しい本社の完成により、BEEAHはいかにしてテクノロジーがサステイナブル・インパクトを強め、究極的には未来のスマート&サステイナブル都市の構築に寄与できるかを提示している。 

これらの理論を具現化することにより、本社のデザインはローカルな気候条件に適するように、相互に連なる砂丘群の一翼として環境に対応している。シャールジャのアルサジャー砂漠のコンテクストにあるザハ・ハディド・アーキテクツのデザインは、卓越風(ある地方で、ある特定の期間に吹く、最も頻度が多い風向の風)でできる凹面と凸面が輻輳する砂丘によって形成された周辺ランドスケープを反映している。

本社の建築は全ての内部空間に十分な自然光と眺望を確保し、他方厳しい太陽光に晒されるガラス開口部を限定している。建物を構成するふたつの砂丘形の建物は、パブリック部門と中央の中庭を通して管理ゾーンに接続している経営部門が入っている。インドアの中庭はオアシスであり、自然換気システムを採用するには必要不可欠な空間となっている。

ビジターは高さ15mのドームに入るが、そこは自然換気をし、パッシブな昼光で満たされている。中央にあるコートヤードやオープン・プランのオフィスに加えて、この本社にはスマート・ミーティング・ルーム、巨大なビジターズ・センター、およびオーディトリアムなどがある。

延床面積9,000㎡の「BEEAHグループ新本社」は、コア部分にローカルな地域から調達された材料を多量に使用している。その上未来的なテクノロジーを装備し、LEEDのプラチナム認証を得ている。さらにネットゼロ・エミッションおよび最小エネルギー消費を目指している。

ファイバー補強のガラス・パネルはソーラー・ゲインを減らし、他方スラブとガラスのクーリングにより、最適な居心地を保証するインテリア温度を設定することができる。敷地内の水処理施設で排水を濾過することで、水の消費量を減らしている。またソーラー・ファームがテスラ・バッテリー・パックをチャージし、建物の日々のエネルギー需要に合わせている。

従業員たちが享受できるのは、コンタクトレス通路をはじめ、バーチャル・コンシエルジュ、スマート会議室、そして日々の仕事をオートマ化するコンパニオン・アプリなどである。建物のスマート管理システムは、その空間の使用頻度に応じて自動的に照明や温度を調節する。個々のルームには、強力なコラボレーション・ツールをもつリモート・ワークやハイブリッド・ワーク・システムが装備されている。

「BEEAH グループ新本社」の2本柱であるサステイナビリティとディジタリゼイションを標榜した、ザハ・ハディド・アーキテクツによる新社屋は、BEEAHグループにとって重要な業績である。それはアラブ首長国連邦のシャールジアにおける環境問題に取り組んだ会社が、未来を先取りした企業に成長した証である。それはサステナブル・フューチャーの実現に向けて、重要かつ不可欠な課題である。

側面道路越しに見る。大きな屋根と小さな屋根の接続部分の下側をアプローチ道路が貫通している。

アプローチ道路の両側に涼しさを呼ぶ反射プールがある。高い屋根の部分がメインのエントランス・ホールになっている。

側面から見ると、左端にアプローチ道路が二つの反射プールの間を抜けて行くのが分かる。


俯瞰した建物全景。砂丘のような屋根が連なるデザインは、ザハ・ハディドが得意とする流麗なフォルムである。

レセプションを見る。レセプションの右手奥にホワイエがある。

ホワイエの大空間。中央の階段はザハ・ハディドがデザインしたものでロンドンのザハ・ハディド・ギャラリーにもある。

ザハ・ハディドの階段の詳細。階段のステップは両端の壁と一体になって、曲面になって繋がっている。

配置図

1階平面図

2階平面図

立面図





Zaha Hadid & Patrik Shumacher/ Zaha Hadid Architects
Portraits: Zaha Hadid :by Alberto Heras
     Patrik Shumacher:Courtesy of Zaha Hadid Architects

Photos: ©Hufton+Crow 


Design: Zaha Hadid Architects
設計:ザハ・ハディド・アーキテクツ





著者プロフィール
 
淵上正幸 Masayuki Fuchigami
建築ジャーナリスト。東京外国語大学フランス語学科卒。2018年日本建築学会文化賞受賞。建築・デザイン関連のコーディネーター、書籍や雑誌の企画・編集・執筆、建築家インタビュー、建築講演や海外建築視察ツアーの企画・講師などを手掛ける。主著に『ヨーロッパ建築案内』1~3巻(TOTO出版)、『アメリカ建築案内』1~2巻(TOTO出版)、『世界の建築家51人:コンセプトと作品』(ADP出版)その他がある。