21世紀世界の先端建築を渉猟する
Ranging Over the 21st Century World Architecture

淵上正幸(建築ジャーナリスト)
Masayuki Fuchigami(Architectural Journalist)

2020.01.07

Absolute Towers (Mississauga, Canada)
アブソリュート・タワーズ(カナダ、ミシソガ)

1.「アブソリュート・タワーズ」のネーミングの由来は、アブソリュート・アヴェニューの交差点に建っているからだ。

ゲートウェイ役を担うランドマーク・タワー

MAD アーキテクツといえば、今や世界的に知られた中国屈指の設計事務所である。3名の創設メンバーのうち、領袖マ・ヤンソンに加えて、日本人パートナーの早野洋介氏がいるのも、われら日本人にとっても近しい感じだ。もう一人は中国女性のダン・チュンだ。

MADが考える現代建築への警鐘は、モダニズムからコンテンポラリズムへと移行し、さらなる発展を続けるコンテンポラリー・アーキテクチャーの未来を憂いていることだ。「モダニズム建築には貴重なアフォリズムが残された。曰く“住宅は住むための機械である”。しかしながら私たちは、機械時代をはるかに超えた進歩を続けてきた。その結果今日私たちは、別の質問に迫られている。“建築はどのようなメッセージを伝えるのか?” “今日の住宅とは何か?”」

北米における急速に開発が進む他の都市の郊外と同様、カナダ・トロント郊外のミシソガは新しいアイデンティティーを求めている。これは拡大する都市のニーズである、単なる効率以上のものであり、かつ都市住民に彼らのホームタウンに対するエモーショナルな関係を植え付けるまたとない機会でもある。

モダニズムのシンプルかつファンクショナルなロジックに変わって、MADのデザインは、現代社会の複雑で多様性に満ちたニーズを表現している。「アブソリュート・タワーズ」は、ただ単に機能的な機械ではない。ふたつのメイン・ストリートの交差点に建つ建物は、その敷地の重要性に対応し、エレガントなランドマークとしてのステータスを表現し、背後の都市のゲートウェイとしての役目を担っている。それは単なる集合住宅タワーのフォルムを超えて美しく、スカルプチュラルで、ヒューマンな様相を呈している。

ランドマーク・タワーとしてのステータスにも関わらず、高さのみが強調されているわけではない。この建物のデザイン的特徴は、従来の高層ビルに用いられていた住戸を隔てる垂直的なバリヤーを排除した、建物全域を取り巻く連続するバルコニーがある。それは建物全周を取り巻き、周囲のアーバン・ビューに対応して、異なるレベルで異なる角度で、建物外壁を連続的に回転している。

MADの狙いは、ミシソガのアーバンスケープを360度のパノラミックな景観として個々の住戸に与えることにより、都市住民が自然の要素に親しむことであり、彼らに自然への感謝を再認識させることである。建物は延床面積45,000m²、56階建て、高さ170mのA棟と、延床面積40,000m²、50階建て、高さ150mのB棟からなる。そのA棟の外観がマリリン・モンローの足を組んだ姿に酷似していることから、「モンロー・タワー」のニックネームが付いている。

2.交差点周辺には樹木が茂り、歪んだタワーが立ち上がり、背後の都市のゲートウェイとしての役目を担っている。
3.ミシソガの夜景に屹立する「アブソリュート・タワーズ」。手前が高い方のA棟。
4.複雑な歪みを見せるタワーを見上げる。
5.上階から住戸を隔てる垂直的なバリヤーのないバルコニーを見下ろす。
6.A棟の膨らんだボディをかすめて交差点を見下ろす。まさに交差点に建つこの町のランドマークだ。
7.タワーの背後には広大な自然が広がり、その先にはトロント・ダウンタウンが見える。高いタワーはジョン・アンドリュースらの設計による「CNタワー」。
8.交差点の反対側から見ると、マリリン・モンローが足を組んだ姿態が想像される。
配置図
マトリクス・プラン
基準階平面図
断面図

MAD Architects
Portrait by MAD Architects
(写真左よりマ・ヤンソン、ダン・チュン、早野洋介)

http://www.i-mad.com/

Photos by Iwan Baan
Drawings by MAD Architects

Design: MAD Architects
設 計:MADアーキテクツ

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