かつて世界中を騒がせたパリの「グラン・プロジェ」。巨大な10件のプロジェクトがパリ改造のためにスタートした。フランスを代表する建築家や海外の著名建築家が、今日のパリを綾どる素晴らしい建築をコンペや特命で生み出した。パリのデファンス地区にできた唯一の「グラン・プロジェ」が、デンマークの建築家ヨハン・オットー・フォン・スプレッケルセンがコンペで勝った「グラン・ダルシュ」だ。升の底を取り去ったような正方形の穴が開いた高さ100mの建物で、ご存知の方も多いと思われる。
その「グラン・ダルシュ」の手前でシャンゼリゼ側から見て左側に建っているのが、「マジュンガ・タワー」だ。デファンスの歴史的軸線沿いに位置し、緩やかにしなる建物形態は優美なフォルムで、建築では滅多にお目にかかれない形だ。建物名のマジュンガはフランスの植民地だったマダガスカル島の海浜都市から取られたネーミングだ。
高さ195m、47階建てタワーのシルエットは、パリ中心部からも容易に見ることができる。ジャン・ポール・ヴィギュールがデザインしたシンボリックなタワーは、アフリカのモザンビークに面するマダガスカル島のマジュンガ地区にブッシュ・スクールを建設する援助をしている。
「マジュンガ・タワー」は機密性の高いオフィス・タワーのコンセプトをやめて、都市とのコネクションを数多く確立している。デファンス・ペデストリアン・ゾーンの建設により、「マジュンガ・タワー」はデファンス・エスプラナードに面する1階レベルに広いホールをもち、もうひとつのホールは直接ストリートと新しいガーデンに面している。
延床面積69,500m²の巨大な熱帯樹木のように緩やかな曲線を描く「マジュンガ・タワー」は、その有機的な形態で、反復する退屈なビルが連続するビジネス街の環境にジオメトリックなバラエティを与えている。また各階正面ファサード中央部にロッジア(回廊)があり、これがデザインのポイントとなっているが、1階に降りてエスプラナードに行くことなく、ロッジアに出て深呼吸も可能となっている。これはオフィス・タワーのヒューマ二ゼイションを目指した結果である。
また「マジュンガ・タワー」には特殊な換気システムが採用されている。“ブリージング・ダイアフラム(呼吸する膜)”と呼ばれるパンチング・メタルを使用した開閉式の開口部により、ファサード・デザインや、気候・太陽光・気温への適応性を見事に解決している。これにより、外気を程よく取り入れ、最小エネルギー消費を保証。2013年のヨーロッパ・ブリーム賞(サステイナブル賞)に輝いている。
自然光が広いオフィス・スペースに拡散され、各階のエレベーター・ランディングのあるロッジアが各階のファサードで目立っている。これがかつての典型的なオフィス・タワーの単純さを打ち破っている。タワーの足元にある植栽されたガーデンのようなテラスは、外部空間で人に会い、勤務し、ランチをエンジョイできる素晴らしい場所である。