21世紀世界の先端建築を渉猟する
Ranging Over the 21st Century World Architecture

淵上正幸(建築ジャーナリスト)
Masayuki Fuchigami(Architectural Journalist)

2019.04.16

Nora Tornen Towers (Stockholm, Sweden)
ノラ・トルネン・タワーズ(スウェーデン、ストックホルム)

北側から見た「イノヴェーション・タワー」の上層階外観。周囲には高層ビルがない戦前の古い建物が密集している。

アウトドア・アクティビティを意図した北国の新しい集合住宅スタイル

スウェーデンの首都ストックホルムは比較的に高層ビルが少ない。そうしたストックホルムとソルナ地区の境界にある新興住宅地に、ふたつの高層集合住宅タワーからなる「ノラ・トルネン・タワーズ」が計画された。そのうち高さ125mの「イノヴェーション・タワー」が、2018年にOMAのパートナー、レニエ・デ・グラーフのデザインで完成した。他の「ヘリックス・タワー」は高さ110m33階建てで、2019年末の竣工が予定されている。

「ノラ・トルネン・タワーズ」は、ストックホルムの市街地では最も高い集合住宅タワーで、同市へのゲイトウェイを構成する建物である。「イノヴェーション・タワー」には182戸があり、44m2のワン・ベッドルーム・タイプから271m2の最上階ペントハウスまで多種のタイプがある。アメニティー施設として、シネマ室、パーティ&祝祭用ディナー・ルーム、ゲスト用アパート、サウナ付きジム、リラクゼーション・エリアなどがある。また「ヘリックス・タワー」は138戸があり、同じようなアメニティー施設が予定されている。

建物のデザインは、プレキャストのRCエレメントをモジュラー・システム化した表現。外観は各住戸の出窓と奥まったテラスが交互に繰り返される構成で、全体ファサードをまとめている。外壁はリブ付きのカラー・コンクリートで、無数の小石が表面に浮き出た仕上げ。これは建築評論家のレイナー・バンハムがいう、スウェーデンで生まれたブルータリズムの賜物で、ブルータリズムは、有名なスウェーデンの建築家グンナー・アスプルンドの息子ハンス・アスプルンドが、はじめて用いた建築用語であるという。

ストックホルム中心部の建築は、そのほとんどが第2次世界大戦以前に建てられた古い建築である。出窓の大きなガラス面とテラスの存在は、年の半分は昼間の太陽光が乏しい国にあっては貴重な資産だ。OMAは北国の住人にアウトドア・スペースを楽しむ新しいアーバン・ライフを提案。ユーロ諸国の都市において、ここは4番目に空気のきれいな都市で、戸外アクティビティをエンジョイする傾向はさらに強まることをOMAは察知していたようだ。なんと建物の起工式が始まる前に、全戸が売却されてしまったというのも頷ける。

従来のOMAによる集合住宅デザインは、例えば「インターレイス集合住宅」のようにモニュメンタルな印象のものが多い。ここではプレファブという限定されたエレメント数で、可能な限りの住戸タイプ数を創造することが目論まれた。北国における次世代の新しいハウジング・タイポロジーに焦点を当てたOMAの努力がひとつの頂点を迎えた。「それは通常のフォルマリズム的な集合住宅タワー・デザインから、個性的・家庭生活的な方向、むしろヒューマニズム的な方向へとシフトした」と、担当したレニエ・デ・グラーフは述懷している。

東側ストリートから見た全景。段状に規則正しく北東方向に下降している外観。
南側のトルスガルテン通りからの全景。建物の左側真向かいに「ヘリックス・タワー」が2019年末に完成する予定だ。
交差点越しに建物低層部の外観を見る。周囲の建物に比べると出窓の窓がかなりの大きさであることがわかる。
道路側低層部の夜景。大きな出窓の上部が上階のアパートのガラス張りのテラスになっている。
1階エントランス・ホール。2層分吹き抜けたホールは白く清楚な印象だ。
アパートの居間からテラス越しにストックホルム市街を眺望する。寒いストックホルムでも季節のいい時はテラス・ライフができる素晴らしさ。
テラスに出ると、小石混じりのリブ付きカラー・コンクリートの外壁が暖かさを感じさせる。
海側方向から「イノヴェーション・タワー」を遠望する。左手にラブナル・エストベリ設計の「ストックホルム市庁舎」のタワーが見える。
配置図:右手の赤い建物が完成した「イノヴェーション・タワー」
外観フレーム&ヴォリューム図
「イノヴェーション・タワー」の各階アパートメント配置図
「ヘリックス・タワー」基準階平面図
「イノヴェーション・タワー」基準階平面図
ベイ・ウィンドウ(出窓)とテラスの構成図
出窓分解図
完成予想図

Reinier de Graaf (OMA)
Portrait: ©Adrienne Norman

https://oma.eu/

Photos: ©Laurian Ghinitoiu/ Courtesy of OMA
Drawings: OMA

Design: Reinier de Graff (OMA)
設計:レニエ・デ・グラーフ(OMA)

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