共働き夫婦がペアローンを活用すれば、理想の住宅を購入できる可能性が高まります。ただし、注意点を抑えておかないと後悔の原因となりかねません。この記事では、以下の内容をわかりやすく解説します。
- ペアローンとは何か
- メリット・デメリット
- 後悔の原因となるケース
ペアローンの仕組みを理解したい方や、後悔したくない方は、ぜひ参考にしてください。
ペアローンのメリットとデメリット
ペアローンとは、夫と妻が別々に住宅ローンを結ぶ仕組みです。お互いが連帯保証人となり、各自が団体信用生命保険(団信)に加入する必要があります。借入金額や金利、返済期間は夫と妻で異なる契約が可能です。
メリット
共働き世帯がペアローンを組むメリットは、主に3つあります。
借入可能額が増える
ペアローンの最大の魅力は、個人でローンを組むよりも借入金額が増える点です。夫婦の収入額によるものの、単身でローンを組むよりも住宅の購入予算が大幅にアップします。
住宅ローン減税の対象者が2人となる
住宅ローン減税とは、住宅ローン残高の0.7%を最大13年間、所得税から控除する制度です。ペアローンでは夫婦それぞれが債務者となるため、住宅ローン控除を2人で受けられます。
(参考:国土交通省「
住宅ローン減税」)
返済方法や期間を柔軟に設定できる
ペアローンは返済方法や期間をそれぞれが設定できるため、育児や介護に備えて調整可能です。ライフプランに合わせて片方の借入額を抑えたり、借入期間を短くしたりできます。夫婦どちらかの繰り上げ返済を優先させて早期に完済できるのも利点です。
デメリット
共働き世帯にとってメリットが多い反面、注意したいデメリットも存在します。
一方の収入が減ると返済が厳しくなる
共働きが前提のローンとなっているため、片方が退職や転職によって収入が減少した際は注意が必要です。毎月の返済が一方にのしかかり、支払いは厳しくなる可能性があります。住宅ローンの完済予定が、どちらかの定年を越えている場合は慎重に検討しましょう。
契約にかかる諸費用が2人分必要
ペアローンは2本の住宅ローン契約となるため、諸費用は夫婦それぞれに発生します。融資事務手数料や印紙代の初期費用だけでなく、団体信用生命保険への支払いも考慮しなければなりません。契約後に後悔しないためにも、慎重に資金計画を立てましょう。
万が一に備えるのがむずかしい
住宅ローンは、35年を目安に長期にわたって返済します。返済期間中に家庭の状況が変わっても、途中で返済をやめられません。夫婦の働き方の変化や収入減少、離婚など不測の事態に備えるのはむずかしいという課題があります。
ペアローンを後悔する3つ事例
住宅ローンは住宅購入をサポートしてくれるシステムではあるものの、後悔の原因となるケースも見受けられます。ペアローンを組んで後悔する可能性がある3つの事例を紹介しましょう。
離婚
ペアローンは夫婦それぞれが返済義務を負い、住宅は共同名義となります。離婚時に家の所有権やローン返済に関するトラブルで後悔する人は少なくありません。離婚を決めても、家の売却や返済に関しては夫婦の合意が必要です。
離婚時のトラブルを避けるためには、以下の対処法が考えられます。
- ペアローンの一本化:家の所有権を持つ方にローンを一本化する方法です。ただし、十分な収入がない場合はむずかしい可能性もあります。
- 家の売却:家の売却資金でローンを完済する方法です。売却後もローンが残る場合は、別の対応が求められます。
一方の収入減
ペアローンでは、お互いが相手の連帯保証人となります。一方が返済できなくなった際、連帯保証人として支払いを請求される例は以下の通りです。
- 出産や育児による収入減
- どちらかの転職や退職
- 病気による治療での休職など
片方の収入が不安定になると、もう一方に大きな負担がかかります。将来的に収入が不安定となる状況が予測される場合、ペアローンの契約で後悔しないよう慎重に検討しましょう。
死別
住宅ローンの契約時には、団体信用生命保険への加入が求められます。団体信用生命保険に加入しておくと、契約者が死亡した際に保険金でローンの返済が可能です。
たとえば、夫が亡くなった場合、夫のローンは保険で完済できます。しかし、妻の住宅ローンは残ったままで、返済義務は消えません。小さなお子さんがいる家庭の場合、ローンを支払いながら教育費の準備をする必要があります。
どちらかが亡くなった際に困らないよう、生命保険や貯蓄などの対策を講じておくと安心です。
ペアローンの注意点と後悔しないためのポイント
ペアローンは夫婦それぞれに収入があることが前提なものの、共働きのスタイルは家庭によって異なります。どのような夫婦に適しているのか、注意すべき点について解説しましょう。
夫婦の収入が安定している
住宅ローンは数十年にわたる借り入れで、金額も高額です。毎月返済するためには、安定した仕事に就いている必要があります。正規雇用や専門職の方が、パートタイムよりも安心して利用できるでしょう。
夫婦の収入差に注意が必要
たとえば、夫が世帯収入の大半を占め、妻が扶養内でパート勤務していると夫婦の収入に差が生じます。夫婦の収入差は、ペアローンのメリットが薄れる要因の1つです。
このような場合、夫を契約者として住宅ローンを組む「収入合算」か、夫一人を住宅ローンの契約者とする「単独契約」が適しているかもしれません。
負担額を正確に把握しておく
ペアローンは、単独で住宅ローンを組むよりも諸費用が2倍かかります。契約に伴う手数料や団体信用生命保険の料金などを考慮しましょう。借入金額以外にかかる金額を正確に把握して、後悔のリスクを減らしましょう。
ぺアローン以外の資金調達手段
住宅購入にあたって、ペアローン以外におすすめのローンの組み方に「単独ローン」と「収入合算」があります。それぞれの仕組みについて、くわしく解説しましょう。
単独ローン
単独ローンとは、夫または妻の名義で1つのローンを組む方法です。単独ローンとの主な違いを表にまとめました。
|
ペアローン |
単独ローン |
契約の数 |
2本 |
1本 |
所有権 |
共同名義 |
契約者名義 |
住宅ローン控除 |
両方 |
契約者のみ |
団体信用生命保険 |
両方 |
契約者のみ |
共働きであっても単独ローンの利用は可能なため、一方の収入を教育資金や車の購入や貯蓄に回す方法もあります。女性の場合、妊娠や出産、育児で仕事を離れるケースが少なくありません。単独ローンであれば、ライフスタイルの変化に左右されないメリットがあります。
収入合算
収入合算とは、夫婦の収入を合算してローンを組む方法です。「連帯債務型」と「連帯保証型」の2つのパターンがあります。
連帯債務型
夫婦共に債務者となり、同様にローンの返済義務を負うシステムです。夫婦それぞれに返済義務が発生するものの、家の所有権は共同となります。
夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられ、ペアローンと比較して諸費用を抑えられるのがメリットです。ただし、団体信用生命保険の加入はローンの名義人だけとなっています。
連帯保証型
ペアローンの仕組みを理解すれば後悔しない
ペアローンは夫妻がそれぞれ借り入れでき、マイホーム購入時の資金額を増やせる便利な制度です。夫婦2人とも住宅ローン控除を受けられるため、節税のメリットもあります。一方で、退職や離婚などに伴う返済リスクなどのデメリットにも注意が必要です。
住宅購入を検討中の方は、ペアローンの特徴について理解しておくと後悔しません。将来的なライフイベントや変化に備え、慎重に計画を立てるのが成功への鍵です。記事を参考にし、お互いが負担を感じないように住宅ローンを選びましょう。