コロニョーラ・アイ・コッリは、イタリアの北部、ヴェネト州のヴェローナにある緑豊かな美しい丘に恵まれた小さな街である。「コロニョーラ・アイ・コッリ小学校」の敷地は、同地のメインとなる教会や墓地と同列をなす直線上にあり、谷間に向かって開けたのどかな土地柄である。こうした周辺コンテクストからのインスピレーションがデザインに大きく作用した。さらに丘のコンタラインを参考にして、学校の中庭が決定された。そうした理由から、小学校は大地にしっかりと根ざした建築となっている。
コロニョーラ・アイ・コッリの街は、BC100年頃にローマ人がつくった軍事基地を牧場として開発したものである。そのため街は、当時の一辺が710mの基地
の幾何学的数値を採用してつくられた。それと同じように小学校も、かつても歴史的な街の幾何学的数値である710mを参照し、その1/10の長さである71mをベースにしてデザインされた。
小学校のデザインを創造するに当たって最も重要なことは、敷地における強い農耕地的伝統と多数の丘という地形を尊重することであった。豊かな緑や丘の形態が、このプロジェクトの基本的なデザイン骨子となっている。そのひとつが、生徒たちが自由に遊べる大きな緑のルーフ・ガーデンである。
建物は「コ」の字形平面をしており、その中心にインナー・コートヤード(校庭)があり、南側に開いている。西側から芝生のスロープが北方向へ向かって上昇して2階ルーフ・レベルとなり、さらに東側校舎の屋上にも達して生徒たちのパラダイスとなっている。ルーフ・ガーデンからは緑溢れる緩やかな谷間の景色が満喫できる。また校舎の南東側に突き出た鋭角3角形のシャープな部分は、奥にステージと座席が配され、生徒たちのパフォーミング・アートや講堂として使用される。
校庭に面するファサードの立面形も同様に、周辺コンテクストから啓発された。特に敷地の東側にある一群の丘は、一見してわかるようなハート形平面形を想起させる形態を示唆しており、この形は校庭の平面形となっている。建物は校庭を抱くように配置され、物理的な壁などを使用することなく、生徒たちの保護された空間を創出している。
小学校はすべて2階建ての校舎で構成されており、メイン・エントランスは2階にある。というのは、低い丘の頂上レベルに入口をデザインしたからなのだ。2階のエントランスを入ると、そこは大きな風通しの良いアトリウム。この広いアトリウムを通って各クラスルームやマルチパーパス・ルームへと至る。アトリウムは内部の遊び場であり、イベント・スペースでもある。1階では全ての教室から生徒は直接校庭に出ることができる。
敷地のすぐ北側には中学校があり、さらにその先の北東側に幼稚園が、北西側にスポーツ・ホールが配され、このあたり一帯は文教地区となっている。なおクラウディオ・ルッチンは、巨匠カルロ・スカルパと同様、名門ヴェネツィア建築大学を1984年に卒業し、現在イタリアのボルツァーノに事務所を構える建築家で、多数の建築コンペに入賞している。