2025.04.15建築

21世紀世界の先端建築を渉猟する 第84回
Ranging Over the 21st Century World Architecture (#84)

淵上正幸(建築ジャーナリスト) / Masayuki Fuchigami(Architectural Journalist)

Bjarke Ingels Group Headquarters(Copenhargen, Denmark)
ビヤルケ・インゲルス・グループ(BIG)本社(デンマーク、コペンハーゲン)

配置図。コペンハーゲンのノードヘブン近郊にある細長い桟橋に位置し、あたかも広い海に浮かぶ孤島のような存在である。

●スリムな桟橋に完成した先端的建築オフィス

ビヤルケ・インゲルスはデンマークからニューヨークへと移った建築家で、今や世界中で活躍する建築家である。また日本では、富士山麓にトヨタが開発中の「Woven City」のデザイナーとして活躍している。その彼が古巣のデンマークのコペンハーゲンに新しいBIG本社を完成させ、話題になっている。

建設工事2年間の後、BIGの4,880㎡に渡る本社は、完成間近となった。コペンハーゲンのノードヘブン近郊にある細長い桟橋に位置し、DGNB(ドイツ持続可能建築協会)の金賞に輝いたサステイナブル・デザインである。

ここではユニ・グリーンと呼ばれる新しいタイプのコンクリートが使用された。これはBIGとUniconが共同で開発したもので、CO2を約25%も削減したもので、結果的にはCO2のフットプリントを年間11.3Kgも減少させるのである。

BIGのLEAPP(ランドスケープ、エンジニアリング、建築、プランニング、およびプロダクト)のチームによって、ドアのハンドルから長さ20mのコンクリート・ビームまで、またガラス・ファサードから近隣のランドスケープまでが実現される。本社のデザインでは、ソーラー・エネルギーや地熱エネルギー・システムを用いて、再生可能エネルギーを約60%使用することができる非常にサステイナブルな建築だ。

メインのエントランスを入ると、BIGのスタッフやゲストは、ピラネージ(中世イタリアの幻想的な作風の建築家)的な空間にいることに気が付く。そこでは最上階までの社内生活が、対角線的な視野でデザインされており、インゲルスらしい斬新かつユニークな空間構成が素晴らしい。

ブリッジのようなアプローチを歩いて行くと、前庭とおぼしきあたりに樹木を配しているために、海に浮かぶ緑の島のような雰囲気を醸している。

夜景の建物を側面から見る。近隣に黒い大きなクレーンが見えて、この辺りは海際の工業地帯の感じが伝わってくる。

建物脇の木陰のベンチで、社員は一休みができる。

大きな吹き抜け空間は縦横に階段が交差し、まさにピラネージ的空間と呼ぶにふさわしい。

会議室とおぼしき空間からも、フルハイトの開口部から海が見える。外部にはテラスが設けられている。

建物を俯瞰すると、テラスにも植栽が施されているのが分かる。

随所に設けられた小さなテラスで社員が歓談しながら休息を楽しめる。

Design by BIG
設 計 : ビヤルケ・インゲルス・グループ

Portrait by Blaine Davis

Photos by Laurian Ghinitoiu


著者プロフィール
 
淵上正幸 Masayuki Fuchigami
建築ジャーナリスト。東京外国語大学フランス語学科卒。2018年日本建築学会文化賞受賞。建築・デザイン関連のコーディネーター、書籍や雑誌の企画・編集・執筆、建築家インタビュー、建築講演や海外建築視察ツアーの企画・講師などを手掛ける。主著に『ヨーロッパ建築案内』1~3巻(TOTO出版)、『アメリカ建築案内』1~2巻(TOTO出版)、『世界の建築家51人:コンセプトと作品』(ADP出版)、「巨匠たちの住宅 20世紀住空間の冒険」(青土社)その他がある。