韓国は隣国の中国ほどではないにしても、アジアでは著名海外建築化のデザイン作品が多い国である。例えばOMAの「ソウル国立大学美術館」、ザハ・ハディドの「東大門デザイン・プラザ」、ジャン・ヌーヴェルの「サムスン美術館 Leeum」、MVRDVの「ソウル・スカイ・ガーデンズ」など、世界の著名建築家の作品がひしめいている。
今回OMAのクリス・ヴァン・ドゥインがデザインした「クァンギョ・ガレリア」は、1970年代に韓国で初めて生まれた大規模デパートであるガレリアの支店だ。以来同店は韓国の小売市場において、先端を疾走する大手デパートとなった。今回の新店舗はソウル南部にあるニュータウンのクァンギョ地区に完成した国内6番目の支店で、同社の最大店舗である。
OMAの建築デザインには幅があるといえばそうだが、これはビックリものだ。建物はまさに奇想なデザインをまとった巨大な岩石の両国といった印象だ。都市のワン・ブロックを占める巨大な矩形の岩石を切り出したような外壁に、切子面状のガラス開口部が、蛇のようにくねって外壁に取り付いているといった異様な外観。
クァンギョ・ニュータウンの中心に位置する建物は、アーバン・デブロップメントによる特有の高層集合住宅タワー群に囲まれている。「クァンギョ・ガレリア」のファサードは、自然石のような素材をモザイク状に張り詰めた不思議な表情。それは近隣にあるクァンギョ・レイクパークにおける自然を参照したデザインなのだ。
建物はそのクァンギョ・レイクパークと、林立する高層集合住宅タワー群のちょうど中間あたりに位置している。建物の外壁を覆うストーン・ファサードのテクスチャ—が、レイクパークの自然を喚起させると同時に、クァンギョ市民の自然に対する視覚的な拠り所となっている。
建物は地下1階地上12階建てのデパート。外壁を取り巻く開口部は、1階から徐々に上昇しながら建物をループ状に取り巻いて行き、文化的なアクティビティもできるルーフ・ガーデンに至る。つまりこの開口部の内部は来客用のパブリック・ループとなっており、クァンギョの街並みを楽しみながら、自分の目指す売り場へと至ることができるデザイン。
クリス・ヴァン・ドゥインのデザイン・ポイントは、ショッピングとカルチャー、都市と自然をミックスすることで、ショッピングの予測可能性をはるかに超えた場所としての「クァンギョ・ガレリア」が、市民に親しまれることであった。
設計を担当したクリス・ヴァン・ドゥインはデルフト工科大学でマスターを取得。1996年にOMAに参加し、2014年にパートナーになった。OMAの代表作のひとつである北京の「CCTV」をはじめとする主にアジアの作品を担当してきたが、「ユニヴァーサル・スタジオ・ロサンゼルス」「プラダ・ニューヨーク&ロサンゼルス・ストアーズ」などアメリカ作品も担当。最近では「モスクワ現代ガレージ美術館」(2015)、「ミラノ・プラダ財団」(2015)、「アレクシ・ド・トクビル図書館」(2017)なども手掛けたシャープなセンスをもつパートナーである。