ニューヨークのハーレム125ストリート&126ストリート。ビヤルケ・インゲルスがデザインした「ザ・スマイル」は、ハーレムに完成した1階に看護学校を擁し、上部に集合住宅がある両ストリートをつなぐ複合施設。延床面積26,000㎡の建物は、集合住宅の3分の1は手頃なアパートメントで、この界隈における集合住宅の多様性を補強している。
T字形をした建物プランにより、ユニット・サイズやレイアウトにバラエティがある一方、近隣ビル群との連繋も強化している。この南側キャンティレバー部分は、125ストリートに面した既存の商業ビルの上部に浮遊するように見え、発展するアップタウンに置けるダイナミックな起爆剤を創造している。
建物における最大の特徴をもつ126ストリート側ファサードは、壁面が上部に行くに従って緩やかに湾曲を増していくという、従来の直線的なストリート・ラインに対し、ソフトでエレガントなジェスチャーを見せている。このデザインは建物のマッスを市のゾーニング規制に対応させているし、さらに集合住宅が多いこのストリート界隈により多くの直斜光を導入している。
ファサードに使用された連続するチェッカーボードのパネル・システムは、個々の住宅ユニットに床から天井までのフルハイトの開口部を可能にしている。それによりテナントは同市のオープンな景色をエンジョイすることができる。さらにセントラル・パーク方向へのイースト・ハーレムや、北方向のハーレム川やブロンクスを眺望することができる。
エントランスはタイル張りで、近隣の壁画アートからインスピレーションを得た強烈なカラー・コンクリートのデザインで、界隈のビル群に対しユニークなウェルカムな態度をアピールしている。内部のアメニティとしては、フィットネス・センターをはじめ、メディア・ルーム、リラクゼーション・スパ、ソーシャル・ラウンジ、さらにスカイライトで明るい3層吹き抜けのギャラリーを見晴らすワーク・スペースがある。この中間介在的な空間は、既存ビルのレンガ・ファサードと新しいビルの露出したスティール構造のインテグレーションを象徴している。
ルーフトップ・アメニティとしてワールプール・スパ、水泳プール、その他ソーシャルな活動や集会用に種々のタイプのスペースを提供するルーフデッキがある。建物の外装は黒色のメタル・パネルに対し、インテリアの居住スペースはニュートラルかつミニマルな空間となっている。インテリア全般において、空間は木材、コンクリート打放し、スティール・トラスといった建築素材で構成されている。また住居スペースではより多くのニュートラルな材料を使用するのに対し、パブリック・アメニティ・スペースではより多くファサードのメタル・パネルやカラー・タイルを組合わせている。
ユニークな形態で界隈を明るくする「ザ・スマイル」は、前世紀のセットバック規制をクリアしている。良き隣人として、建物は既存の界隈の仲間となり、コミュニティのエネルギーを吸収し、イースト・ハーレムのコミュニティに新たなスパーク(火花)を点火したと、ビヤルケ・インゲルスは言っている。