2022.10.05建築

21世紀世界の先端建築を渉猟する 第54回
Ranging Over the 21st Century World Architecture (#54)

淵上正幸(建築ジャーナリスト) / Masayuki Fuchigami(Architectural Journalist)

Princeton University, Lewis Arts Complex (New Jersey, USA)
プリンストン大学 ルイス・アーツ・コンプレックス(アメリカ、ニュージャージ)

北西側からの全景。正面にある曲面壁の建物は「ブラック・ボックス・シアター」。左のタワーは「ダンス・スタジオ」。

●ローカル・コミュニティへのゲートウェイ
アメリカのニュージャージ州にあるアイビーリーグの名門、プリンストン大学。そのキャンパス南端にある「ルイス・アーツ・コンプレックス」は、プリンストン大学におけるアートの向上を目的とし、上演、リハーサル、教育の各スペースを、先端的施設用に拡大することになった。このコンプレックスはキャンパスの新しいゲートウェイを形成し、かつキャンパスへの人々の流入や移動を最大限にすることを目指している。

スティーヴン・ホール・アーキテクツとBNIMのデザインによる「ルイス・アーツ・コンプレックス」は、ダンス、演劇、ミュージック・シアターおよびプリンストン・アトリエを統合し、新しいミュージック・ビルにおける教育&研究施設の増設を目指している。「ルイス・アーツ・コンプレックス」は「ウォレス・ダンス・ビル&シアター」、ハーレイ・ギャラリーをはじめ管理事務所やスタジオ群を含む「アーツ・タワー」、新設の「ミージック・ビル」を含んでいる。

3つの建物には地下にある8,000平方フィートのフォーラムにインテグレートされている。このフォーラムはコンプレックス内で開催される種々のアート・シーンに使用される。フォーラムの上には反射プールを擁するアウトドア・プラザが位置している。プール内にあるスカイライトから、水を透過して自然光が下側にあるフォーラムへと流れ込むという、面白い仕掛けがある。これはかつてスティーヴン・ホールが中国で用いたデザインである。

人々の好奇心と交流を促進させるために、新しいアーツ・プラザはダンス&演劇練習スペースや、オーケストラ・リハーサル・スペースを見晴らすように配されている。一般の人々をオープンに招待するために、このゲートウェイ・スペースはローカル・コミュニティを大学にコネクトさせる狙いがある。

「ウォレス・ダンス・シアター」は、“ものの中のもの“というコンセプトに従って開発された。「ブラック・ボックス・シアター」はスティールで構成されているのに対し「ウォレス・ダンス・シアター」は発砲アルミニウム、白塗りウッド、板状コンクリートで構成されている。“ダンシング・ステアー(踊る階段)“が全階を巧みに接続している。「アーツ・タワー」は“埋め込み“コンセプトのストーン・タワーであり、プリンストン大学の歴史的に有名な“ブレア・アーチ”のプロポーションを参照している。

新しいガラス張りの「ミュージック・ビル」は“サスペンション“のアイディアに従って開発された。大きなオーケストラ・リハーサル・ルームの上に、個々のプラクティス・ルームはスティール・ロッドで吊られている。音響的には別個になっているものの、これらの木製チェンバーは反響的なクオリティを有している。3棟全ての建物のコンクリート・ストラクチャーは、有名なイタリアのレッチェ・ストーン張りとなっている。

新しい建物である「プリンストン大学ルイス・アーツ・コンプレックス」は、2006年に100億円の寄付をしたかつての評議員、故ピーター B. ルイスの名前が冠されている。

「ダンス・スタジオ」の地下レベルから見上げる。外部左側に見えるのは「ミュージック・ビル」。この地下部分はフォーラムと呼ばれている。

「ミュージック・ビル」を池越しに見る。全面ガラス張りという大胆なデザインのファサードの中に個々のチェンバーがサスペンション構造で配されている。

「ミュージック・ビル」の夜景。水面を見ると、池の底に四角い白い部分があるが、これはガラス張りのトップライトでフォーラムへ自然光を落としている。

夜景の「アーツ・タワー」を池越しに見る。ダンス・スタジオやオフィスが入っている。

左側に「アーツ・タワー」、右側にブラック・ボックス・シアター」がある。

地下のフォーラムを見る。上部の四角い明かりは、池の底に配されたトップライトからの光が入ってくるフレームである。

“ダンシング・ステアー(踊る階段)“が全階を巧みに接続している。

地下2階平面図

配置図&1階平面図

東西断面図


スケッチ


Design: Steven Holl Architects & BNIM
設計: スティーヴン・ホール・アーキテクツ & BNIM

Steven Holl / Steven Holl Architects
Portrait: Courtesy of Steven Holl Architects

Photos: ©Paul Warchol



著者プロフィール
 
淵上正幸 Masayuki Fuchigami
建築ジャーナリスト。東京外国語大学フランス語学科卒。2018年日本建築学会文化賞受賞。建築・デザイン関連のコーディネーター、書籍や雑誌の企画・編集・執筆、建築家インタビュー、建築講演や海外建築視察ツアーの企画・講師などを手掛ける。主著に『ヨーロッパ建築案内』1~3巻(TOTO出版)、『アメリカ建築案内』1~2巻(TOTO出版)、『世界の建築家51人:コンセプトと作品』(ADP出版)その他がある。