2024.07.08建築

21世紀世界の先端建築を渉猟する 第75回
Ranging Over the 21st Century World Architecture (#75)

淵上正幸(建築ジャーナリスト) / Masayuki Fuchigami(Architectural Journalist)

Hudson Yards(New York, U.S.A.)
ハドソンヤード35 コンドミニアム(ニューヨーク、アメリカ)

マンハッタンの中心にあって、「ハドソンヤード35」は、約300mの高さを誇る超高層ビルで、ニューヨーク市においては5番目に高いコンドミニアム(分譲タイプのマンション)である。この界隈では一番高い集合住宅ビルである。

近年のニューヨークにおけるもっとも目覚ましい開発と言えば、ハドソンヤードだろう。マンハッタンのミッドタウンにおけるハドソン川近くの開発で、2005年から再開発がスタートし、2019年3月にオープンした。2025年には全てのプロジェクトが完成する巨大な開発計画である。

その中でも「ハドソンヤード35」は、約300mの高さを誇る超高層ビルで、ニューヨーク市においては5番目に高いコンドミニアム(分譲タイプのマンション)である。新興のハドソンヤード界隈では一番高い集合住宅ビルとなっている。

集合住宅部分は71階建ての建物のうち、53階から上がコンドミニアムで、それ以下の階は「エクイノックス・ホテル」となっている。建物の外観上の特徴である切り込みの入った丸みのある頂上部分は、ドラマティックなスカイラインを演出し、非常に目立つランドマーク的なデザインとなっている。

内部に目を向けると、床から天井までのフルハイトの開口部は、広く全方向に向けて解放されており、特にハドソン川方向に位置する西側のコンドミニアムはオープンな解放感に浸れるメリットがある。

ハドソンヤード・プラザに面する1階周りには、ニューヨーク市でも最高級のショッピング&ダイニングや、エンターテイメントが楽しめるのが素晴らしい。イギリスの建築家トーマス・へザウィックの建築「ヴェッセル」(2500段の階段と80の踊り場だけで構成された建物)をはじめ、ハイライン公園(高架公園)、「シェッド・パフォーマンス・ホール」(ディラー・スコフィディオ&レンフロ設計の可動のコンサートホール)、ハドソンヤードの店舗群などが目と鼻の先にあるのは嬉しい。

また同様に印象的なアメニティとして、多岐に渡るコンシェルジュ・サービスがあるので非常に便利で助かる。広いラウンジやエンターテイメント・エリアに加えて、5,500㎡のエクイノックス・クラブ&スパの2年間の無料メンバーシップがあるのは豪華なプレゼントではないだろうか。

さらにドア・ボーイやコンシェルジュに加えて、「ハドソンヤード35」のスタッフには住宅関係のディレクターがいる。彼は中にあるエクイノックス・ホテルに連絡を取ったり、多種の在宅サービスを手掛けているのだ。それには個人的なトレーニングや、サロン&スパなどの手配なども含んでいる。住民は在宅ダイニングやケータリングを、豪華な「ステファン・スター・レストラン」に頼めるし、もちろんハドソンヤード全域の高級ダイニング・レストランに頼むことができ、至福の時間を過ごせるのである。

敷地はハドソン川に面したエリアであり、その先のニュージャージー方向へのパノラマ・ビューも素晴らしい。

テラスからの景観も圧巻の素晴らしさだ。

リビング・ルームからハドソン川の河口方向を見る。正面左手に見えるひと際高い建物は「ワン・ワールド・トレード・センター」である。

豪華な雰囲気に包まれたエントランス・ラウンジ。

重厚なエントランスの外観
 
Design by SOM(Skidmore, Owings & Merrill)
設   計 : SOM(スキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリル)

No Portrait

https://www.som.com/

Photos by SOM





著者プロフィール
 
淵上正幸 Masayuki Fuchigami
建築ジャーナリスト。東京外国語大学フランス語学科卒。2018年日本建築学会文化賞受賞。建築・デザイン関連のコーディネーター、書籍や雑誌の企画・編集・執筆、建築家インタビュー、建築講演や海外建築視察ツアーの企画・講師などを手掛ける。主著に『ヨーロッパ建築案内』1~3巻(TOTO出版)、『アメリカ建築案内』1~2巻(TOTO出版)、『世界の建築家51人:コンセプトと作品』(ADP出版)、「巨匠たちの住宅 20世紀住空間の冒険」(青土社)その他がある。