2018.06.18建築

21世紀世界の先端建築を渉猟する 第2回
Ranging Over the 21st Century World Architecture (#2)

淵上正幸(建築ジャーナリスト) / Masayuki Fuchigami(Architectural Journalist)

レゴハウス(デンマーク、ビルン)
Lego House(Billund, Denmark)

 House of the Lego, by the Lego, for the Lego(レゴの、レゴによる、レゴのための家)

 ”レゴ”といえば、今やグローバルに浸透した子供のみならず大人にまで人気のある知的玩具である。レゴの出身地はデンマークのビルンという街だが、そこに今これまた世界的に活躍するデンマーク出身の若手建築家、ビヤルケ・インゲルスが、12,000㎡の「レゴ・ハウス」のコンペに価値、それが完成して話題だ。
 
BIGチームとLEGOチームは、クラシックなおもちゃスケールのレゴを建築スケールにして「レゴ・ハウス」を完成させ、すべてのレゴ体験の中心に文化的価値のある広い展示スペースやパブリック・スペースをデザインした。ビルンの街の中心部にあるため、高さ23mの「レゴ・ハウス」は、体験センターであると同時に、アーバン・スペースとしてコンセプト化されている。21個の重層するブロック群を個々の建物のように配置して、2,000㎡のレゴ広場を形成している。そのプラザは目に止まる柱が1本もない都市の洞窟のようで誰もがアクセスでき、ビルンの人々は近道として自由に出入りしている。
 
レゴ広場は、市民やビジターをカフェ、レストラン、レゴ・ストア、会議施設などへと迎えることで、非常に賑わっている。レゴ広場の上部にはギャラリー群があり、連続的に展覧会が開催されている。個々のギャラリーはレゴの基本的な色でカラー・コード化されており、展覧会を巡る道順は、カラースペクトルを巡るツアーとなっている。

1階と2階には4つのプレイ・ゾーンがある。それぞれ赤は創造性、青は認識性、緑は社会性、黄色は感情性という具合に、子供の活動や勉強のための局面を反映させている。子供から年寄りまで、非常に広範囲かつインタラクティブな体験ができ、自分たちのイマジネーションを表現することができる。とりわけ世界中から来るレゴのプレイヤーからの挑戦も多い。
 
建物の最上階にはマスターピース・ギャラリーがある。ここにはレゴ・ファンによって愛されたレゴ・コミュニティーに寄与する作品が展示されている。マスターピース・ギャラリーは、アイコニックな2×4レゴ・ブリックを使用してできており、8つの円形トップライトの下にレゴ・アートを展示している。黄金分割のように、レゴ・ブリックのプロポーションは、階段や壁のツヤ付きセラミック・タイルから、21ブロック・スキーム全体まで、このビルでつくられたものすべての幾何学に由来している。
 
マスターピース・ギャラリーの上部の屋上から、市民やビジターは360度のパノラミックな市全域の景色を満喫することができる。いくつかの屋上はパブリックな階段でアクセス可能であり、そこでは人々がインフォーマルなパフォーマンスをベンチに座って鑑賞したりすることができる。
 
下階にある歴史コレクションにおいて、ビジターはレゴ社の歴史やそのブランドについて学ぶことができる。レゴ・スクエアの下側にあるヴォールトでは、子供たちや大人のレゴ・ファンは、今までにつくられたほとんど全てのレゴ作品の所版を見ることができる。そのひとつは774個を使用し、197段のきっとである「レゴ・ハウス」のレプリカである。
 
「『レゴ・ハウス』は、レゴ・ブリックの無限の可能性についての文字通りのマニフェストである。システマティックな創造性を通して、全ての子供たちは元気づけられて自分たちの世界をつくり、遊びを通してその中に住む。その最高のものはまさに建築であり、レゴ・プレイであり、現状よりはるかにエキサイティングで表現が豊かな新しい世界を人々に想像させ、またそれらを現実化するスキルを与える。これを子供たちはレゴ・ブリックにより毎日体験している。今日私たちは本物のブリックでビルンの街に『レゴ・ハウス』をつくった。それは子供たちの首都になるだろう」ーービヤルケ・インゲルス
 21個の重層するブロックが建物を形成している。それぞれのブロックの屋上はカラフルだが、外壁は白亜だ。

 アプローチ側から見た全景。外壁は白く、カラフルには見えない。

 1階には2,000mのレゴ広場ができており、誰もが自由に通過できる。

 マスターピース・ギャラリーへのアプローチ階段室。

 マスターピース・ギャラリーは最上階にあり、8つの円形トップライトで非常に明るい。

赤いジュータンは創造性のプレイ・ゾーン。
 緑のジュータンは社会性のプレイ・ゾーン。

 外部にできたベンチ形の階段。

屋上で遊ぶ子供たち。

1階3次元アクソノメトリック図
 
 2階3次元アクソノメトリック図

 3階3次元アクソノメトリック図

ビヤルケ・インゲルス
Portrait by Jonas Bie
Photos by Iwan Baan / Courtesy of Bjarke Ingels Group
 
http://www.big.dk/

Design: Bjarke Ingels(BIG)
設 計:ビヤルケ・インゲルス
 
 
著者プロフィール

淵上正幸 Masayuki Fuchigami
 
建築ジャーナリスト。東京外国語大学フランス語学科卒。2018年日本建築学会文化賞受賞。建築・デザイン関連のコーディネーター、書籍や雑誌の企画・編集・執筆、建築家インタビュー、建築講演や海外建築視察ツアーの企画・講師などを手掛ける。主著に『ヨーロッパ建築案内』1~3巻(TOTO出版)、『アメリカ建築案内』1~2巻(TOTO出版)、『世界の建築家51人:コンセプトと作品』(ADP出版)その他がある。