コリンズ通り上部より俯瞰した「ファエナ・フォーラム」。敷地外部はピンク色になっている。手前のハリケーン・グリッドの建物が「ファエナ・フォーラム」。次が「ファエタン・バザール」。その奥が「ファエナ・パーキング」。
ハリケーン・グリッドに包まれたイベント御殿
アメリカ・マイアミのファエナ地区の文化的なコアとして、「ファエナ・フォーラム」は、この近隣エリアをはじめ、また広くのミッド・ビーチ・ゾーンの中心的存在になっている。3つのビルから構成されるコンプレックスは、「ファエナ・フォーラム」「ファエナ・バザール」「ファエナ・パーキング」である。
既存の敷地は3つの異なるプログラムに合った、3つの異なる条件を持っている。「フォーラム」用の大きなウエッジ形の敷地をはじめ、「バザール」用の温存されたアール・デコのホテル、そして「パーキング」用の空き地である。敷地は3方を、静かなゾーンであるインディアン・クリークの水路、大西洋に面したビーチ、活動的なコリンズ通りに面している。
「ファエナ・フォーラム」は、大袈裟なデザインで住宅スケールを排除するのではなく、分節されたヴォリュームをもつ変化に富んだ都市的表情を尊重し、インディアン・クリーク・ドライブやコリンズ通りに向けて、異なる外観を生み出している。組み合わされた立方体とシリンダーが、この地域をパブリック・プラザへと橋渡しし、近隣エリアの都市組織を織り成している。
2つのヴォリュームとひとつのフォルムから成る「フォーラム」の幾何学は、アート・スペースやパフォーマンス・スペースのみならず、インタラクションの新タイポロジーをも生み出した。「フォーラム」の決まったプログラムがなかったために、古典的なドーム・スペースとブラック・ボックス・シアターを同居させている。
そのふたつが組み合わされたことにより、コンサートからコンベンションまで、大規模なイベントのキャパシティをもつことができた。個々のスペースは独立して専用の音響や入口を装備し、それぞれのイベントを開催することができる。ゲストは一晩で、ドーム内のブラック・ボックスにおけるラウンドテーブル・ディスカッションのコンベンションを楽しみ、あるいはコリンズ通りの景色を背景にしたコンサートを楽しむことができるイベント御殿である。
コリンズ通り沿いの「フォーラム」のエントランスは、13.5mものキャンティレバーの庇である。ファサードに見える一連のアーチ群は、ハリケーン・グリッド状に配された構造的カテナリー・アーチとして機能している。それはマイアミに茂るヤシの木を想起させる、350個の異なる窓があるファサード・パターンを生み出している。
1940年代のアール・デコ建築「アトランティック・ビーチ・ホテル」のリノベは、スペクタッキュラーな眺望をもつペンとハウス・テラスを挿入した。またこのエリア内の建物のポテンシャルを開放させるために、オープンエア中央コートと「フォーラム」へのパッセージをもっている。
「ファエナ・パーキング」は、ハイテク・メカニカル・システムと、トロピカル建築に共通の角度のついたアナをうがったロウテクなブリーズ・ソレイユ・ファサードを持つカー・リフトを組み合わせている。「ファエナ・フォーラム」を含むこの地区の多種のプログラミングは、マイアミが、リゾート・タウンからラテン・アメリカ諸国へのゲイトウェイとしてシフトしていく推進力となっている。