数ある中国地方都市の中でも、近年特に発展が著しい年のひとつが深圳市だ。日本の槙文彦を筆頭に日本勢も進出しているが、海外勢もOMAのほか多くの世界の建築家が設計している。そんな建築ラッシュの中、新たに参入したのが、ザハ・ハディド亡き後、世界でも数少ない女性建築家フランシーヌ・ホウベンが率いる建築家集団メカノーだ。
深圳市が1980年に経済特区と指定されて以来、高層ビル群が年のスカイラインを変え、人口も1,200万人を超えた。同士の東側に位置する龍崗区(りゅうこうく)に、新しく文化センターが生まれたのも理解できる。「龍崗区文化センター」は、多様性に満ちたリッチなプログラムをアイコニックなアーバン・コネクター(都市連携装置)に包含している。
3.8ヘクタールの敷地は細長く、厳しい高度制限がある。そこで建物をプログラムごとに複数の別個のヴォリュームに分割して、周辺エリアに連結させている。これらの各棟を横切る建物間の通路は近隣道路に並行し、建物西側にあるビジネス地区から、東側にある公園のアクセスを可能にしている。
建物自体は4つの分節されているが、いずれも建物のエッジ部分はRがつき、ファサードには傾斜がついたデザインでソフトな印象だ。各棟からはダイナミックな景観をフレーミングし、パブリック広場をシェルター化し、歩行者を自然の流れへと導いている。建物の流動的な形態は空気の流れを起こし、深圳市の亜熱帯気候における太陽や風雨から守っている。同じような形態言語、高さ、材料を用いることで、各棟はヴィジュアルにまとまりのある全体を形成している。
「龍崗区文化センター」には4つのメインとなるプログラム・エレメントがある。美術館、青少年センター、科学センター、ブック・モールだ。科学センターは子供や青少年のための通俗科学に焦点を当てたもので、青少年センターは音楽やスポーツのような課外活動や州かいの場所を提供している。美術館はパブリック・アートを上階に、都市計画センターを1階と地階に持っている。
各棟のエントランスをシェルター化されたパブリック広場に配したために、多くの文化プログラムが戸外へ拡張できる利点がある。4棟のうち一番大きな棟はブック・モールである。これは本だけに特化したモールで、本に関するイベントのスペースで、サイン会、出版、展覧会などが開催される。
現場打ちコンクリートの建物の内部は、柱、梁、巨大なコンクリート・コアなどがむき出しの造形性を見せてコンクリート彫刻のようだ。各棟端部にあるフルハイトの傾斜したインテリア・スペースのヴォリュームはまさに建築的ハイライト。ビジターはそのスケール感に圧倒される。
遠くから一見すると長大なひとつの建物に見えるが、実は非常に近接した4棟で構成されているのが建物の最大特徴だ。全体で延床面積95,000㎡の建物は、ブック・モールの35,000㎡が最大だ。美術館13,500㎡、科学センター10,000㎡、青少年センター8,000㎡、店舗7,000㎡、地下駐車場21,500㎡など。
赤いアルミ・プレートをまとった文化施設「龍崗区文化センター」は全体の長さが400mもあり、幅50m、高さは25mと巨大な体躯で、いわば横になった超高層ビルと掲揚できる斬新なアイディア建築だ。