スティーヴン・ホールというと、やはり美術館などのアート系の建築作品が多いが、ここに紹介するのは今年完成した新しい公共図書館である。敷地はニューヨーク・クイーンズのイースト・リバー沿いにあるロング・アイランド市のハンターズ・ポイント。
周辺には近年急増した超高層コンドミニアム群が並んでいる。
延床面積約2,000㎡の「ハンターズ・ポイント図書館」は、コミュニティ用の公共図書館で、約3,000㎡という小さな水辺の敷地に建ち、ローカル・コミュニティに対しできるだけ多くのグリーン・スペースを提供している。近隣の超高層コンドミニアム群と無関係といった表情でぽつんと立っているのが面白い。
垂直壁面をもつ建物は伝統的な図書館スタイルだが、和める読書室から活発な集会スペースまで多種の空間を包み込んでいる。建物はRC壁面をアルミニウム塗装したもので、単なるファサードではなく、カーテンウォールや柱を省いた耐力壁となっている。造形的な開口部は、内部での人々の活動を外部へと発信し、また対岸にあるマンハッタンのワイドなスカイラインをフレーミングしている。
内部のプログラムで、子供エリア、ティーン・エリア、成人エリアと分けているのは、東側ファサードにある3つの造形的な窓からわかるが、内部のプログラム的な区分は流動的となっている。内部では温もりを感じる竹材を使用したソーシャル・スペースがコミュニティへ開放されており、子供から大人まで全てのひとにとっての魅力ある空間となっている。外壁全てにある大きな開口部から自然光が流れ込み、空間を活性化している。
デジタル装置と書籍が、本棚とその横にあるオープンな階段に沿って上昇するデジタル・ワーク・ステーションにミックスされて配されている。1階にあるオーディトリアムは公共の会議やイベント・スペースとして利用される。階段は中2階から中3階へとスイッチバックしながら閲覧室群を繋ぎつつ、最後はマンハッタンやイースト・リバーを見晴らす屋上の閲覧テラスへとつながっている。
建物のプランはコンパクトながら、断面形はオープンな空間となり、エネルギー最有効使用のデザインとし、非常に多くのパブリック・グリーン・スペースを外部に残している。東側エントランス側で、建物はイチョウの植え込みをもつパーク・オフィス・パビリオンに接する閲覧ガーデンに向かい合っている。
夜間、ウォーターフロント沿いに位置する「ハンターズ・ポイント図書館」の光り輝く存在は、古いガントリー(構台)にあるペプシ・コーラのサインやロング・アイランドのサインに混じって、この新しいコミュニティ・エリアのビーコンとなっている。