2024.03.27 長野県長野市 Tさんの家

蓄電池と PHEV ※1 を導入 さらにエコで災害に備える住まいに

快適な省エネルギー住宅を研究テーマの一つにする信州大学
高村教授のお住まいは、太陽光発電を搭載したソーラーサーキットのお家です。
2011年に完成し、築 10 年以上 が経過したので 、蓄電池と PHEV を導入 することで 、さらなる脱炭素化を進めたと聞き、訪問しました。

信州大学工学部
高村秀紀教授

 2001年、信州大学大学院工学系研究科システム開発工学専攻 博士後期課程修了。 2018 年、同大学工学部教授。研究室では 再生可能エネルギー(太陽光発電など)を設置し、断熱や高効率設備を導入して省エネルギーを達成し、資源循環が可能となる建築物の開発を目指している。

蓄電池を活用し、省CO 2 の生活を実践
不足分はグリーン電力で賄う

—2011年にカネカの瓦一体型太陽電池「VISOLA」、家庭用燃料電池を設置したZEH(ゼッチ)※2仕様のソーラーサーキットの新築住宅を建築され、築10年目に蓄電池を導入、築11年目にハイブリッド給湯器へ交換、築12年目にPHEVを導入されました。まずは、蓄電池を導入したきっかけ、活用方法を教えてください。
高村:燃料電池※3は、家族の人数が多く、自宅で過ごす時間の多い家庭におすすめですが、不具合を機に、わが家の暮らしに合わせてハイブリッド給湯器に交換しました。当然、燃料電池の自家発電量がなくなったので、太陽光発電の自家消費量を増加させるため、蓄電池を導入してみようと考えました。日中は太陽光発電で自家消費し、蓄電池にも充電し、それでも余った電力は電力会社に売電しています。自家消費率の実測値を確認すると、蓄電池の導入前と後では、年平均21%から51%へ増えていました(グラフ2)。なお、蓄電池は災害時の停電対策として2 割程度、残しておくように設定しています。
そのため、夜間における蓄電池からの供給電力は不足するので、電力会社から購入することになりますが、長野県の水力発電で作られたグリーン電力を購入しています。通常の電気代より少し高くなりますが(1kWhあたり4.4円高い)、省CO2の研究者として、長野産のCO22フリー電気※4での生活を実践しようという考えです。蓄電池の導入により、家族も電気をこまめに消すようになり、自然と省エネや環境に対する意識が高まりました。

 自宅階段下に設置の蓄電池。容量は6.5kWh を使用。 日中の太陽光発電の電力を 積極的に蓄電し、余った分を売電するモードを使用。
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PHEVは太陽光発電で充電
快適な乗り心地で、災害時の備えにも

—PHEV の活用法は。 
 高村:主に通勤用に使っています。充電には自宅の太陽光発電で作る電気で充電したいので、晴れている日は充電を優先させ、バスで通勤することも。充電量はアプリで確認できて便利ですよ。PHEVは走行音が静かですし、スーッと滑るように走るので、運転していて気持ちが良いです。それにほぼガソリンは使用しないので、CO2フリー電気で走っているという喜びもあります(笑)。
PHEVに変えてエコ運転をさらに心掛けるようになりました。自宅で作った電気を“もっと大切に使いたい”という意識が働いているのかもしれません。アクセルを踏み込み過ぎない運転を心がけるようになりました。
この車は停電時には太陽光発電に加え、非常用電源として活用するつもりです。ガソリンエンジンを作動させることで駆動用バッテリーに電気を充電し、それを給電できます。そのため常にガソリンは満タンにして、災害時に備えています。

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 2023年6月に納車されたたばかりのPHEV。「わが家で発電した電気を使って車を走らせたいという思いが強く、購入を決めました。EVにしてもよかったんですけど、僕は極度の心配性なので、ガソリンでも走れる二刀流に(笑)。バッテリー容量は18.1kWhで、12時ぐらいから充電し、夕方ごろに充電が満タンになりますよ。ガソリンは常に満タンにしています」と高村さん。


太陽電池の課題、そしてこれからの省エネ住宅の在り方とは

—蓄電池、PHEVの課題は。 
高村まだまだ費用が高く、導入のハードルが高いことですね。国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言し、住宅の脱炭素・省エネに対する補助制度やEV補助金など、取り組みが進められています。今後は、高効率かつ価格が手頃な製品が増え、普及が加速することを期待しています。
 
—高村邸は蓄電池、PHEV導入とともに次世代のZEH化が進みました。これからのZEHの方向性を教えてください。
 
高村:長野のような寒冷地におけるZEHは、暖房エネルギー消費が多くなるため、太陽電池の搭載量が多めになり、補助金があったとしても初期コストが重くなるのが課題です。災害時に備え、日中に自家消費する分のみを供給できる太陽電池を搭載しておき、電気・ガス併用の省エネ住宅の在り方を追求するのもありだと考えています。
ガスコンロだと停電時も使えるので、オール電化にはないメリットもあります。
今後、省エネ、創エネ、蓄エネの技術が進化し、住宅だけでエネルギーの自給自足できる日もそう遠くないでしょう。 

※1:電気自動車の経済性とハイブリッド車の実用性を併せ持ったプラグインハイブリッド自動車のこと。外部電源から駆動用電池に充電した電気を使用して、EV 走行ができる。
※2:net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略で、家庭で使用するエネルギーよりも、太陽光発電などで作るエネルギーが上回り、1年間で消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にする家のこと。
※3:ガスから取り出した水素と酸素を化学反応させて、電気を発電する発電装置のこと。
※4:発電時にCO2を排出しない、再生可能エネルギー電源に由来する電気のこと。

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 緑あふれる庭では奥様がコンポストを作ったり、多彩な植物を育てたりと、ガーデンライフを楽しんでいます。「妻も環境に対する意識が高く、ひょっとすると僕よりも(笑)。お風呂の水を捨てることなく、洗濯に使ったり、庭に撒いたり有効利用しています。もっと節水するには、雨水を浄化して散水・洗車・トイレの洗浄に活用する雨水利用が考えられますね。少し気になっています」と高村さん。

 正確な外気温を測るため、敷地内に百葉箱を設置。

レジリエンス向上にハイブリッド給湯器も設置

 高村邸の給湯器は電気とガスでお湯を沸かすハイブリッドタイプです。60℃程度の温度までは電気でお湯を沸かし、足りない分はガスで追い焚きするため、普段はガスを使うことはほとんどないのだとか。停電時はバルク貯槽のLP ガスを供給し、太陽電池から供給される電力で湯沸かし可能。電気とガスを併用して万が一に備えているそう。
160L のタンクの水は、いざという時にはトイレなど生活用水として利用可能です。

 一般的なボンベより容量が大きいLP ガスのバルク貯槽

カネカの瓦一体型太陽電池「VISOLA」

VISOLA は瓦の仕様をもとに設計しており、瓦と一緒に屋根に葺くことで目立たず、屋根に調和します。ガラス表面は凹凸加工が施され、反射光を分散させて眩しさを抑えた防眩(ぼうげん)タイプもあるので、北面設置における光害のリスクを減らし、今まで設置を諦めていた方位・環境でも太陽電池の設置が可能です。
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