2024.10.04お金のあれこれ

頭金なしで住宅ローンを組むメリットとリスクを知って賢い選択をしよう

住宅を購入する際は、頭金なしでも住宅ローンは組めます。マイホームを手に入れるハードルが下がる一方で、無理のない返済を行うためには慎重な検討が必要です。この記事では、以下の内容を詳しくお伝えします。
  • 頭金なしで住宅ローンを組むメリットとデメリット
  • 住宅購入時の年齢別注意点
  • 頭金なしでも無理なく返済するためのコツ
自己資金が不足している方や将来の出費に備えて住宅購入したい方は、賢い選択をするための参考にしてください。


住宅ローンは頭金なしでも組める!

 住宅ローンの頭金とは、住宅の価格から借入額を差し引いた金額です。たとえば、3500万円の住宅を購入し、3000万円を住宅ローンで借り入れる場合、500万円が頭金となります。

国土交通省の「令和4年度住宅市場動向調査報告書」によると、2021年度の注文住宅の購入価格と自己資金の平均は以下の通りです。
  • 購入価格:5,436万円
  • 借入額:3,772万円
  • 自己資金:1,665万円
  • 自己資金比率:30.6%
(出典:国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査報告書」)

上記からもわかる通り、住宅購入時の自己資金は平均して3割程度です。

2024年現在、低金利が続いているため、頭金なしで住宅ローンを組んでも返済しやすい状況です。ただし、金利の変動は予測できないため、場合によっては返済が苦しくなる可能性もあると理解しておきましょう。


頭金なしで住宅ローンを組むメリット

マイホーム新築にあたって、頭金なしで住宅ローンを組むメリットはいくつもあります。住宅購入はタイミングも重要となりますので、ご自身の現状と照らし合わせて検討しましょう。

早期の住宅購入を可能にする

頭金なしで住宅ローンを組むと、自己資金の用意をしなくても住宅の購入が可能です。住宅ローンは定年の時点で完済できているのが理想とされていますが、頭金が貯まるまで待つと返済完了が70歳や75歳になってしまう可能性があります。頭金がなくても30歳で家の購入に踏み切れば、35年ローンであっても65歳で完済できるので老後の心配が不要です。

理想のマイホームを手に入れるチャンスを逃さない

土地との出会いは「一期一会」といわれるほど、条件に合う土地に出会えるチャンスは希少です。とくに注文住宅の場合は、土地と建物の両方が希望に叶わないと購入後に後悔することになりかねません。気に入った土地が見つかったときに「頭金がないから」と躊躇している間に他の人に買われてしまうと、同じ様な条件の土地に再び出会うことはむずかしいでしょう。あらかじめ頭金なしでの購入計画を決めておけば、理想の土地を見つけたらすぐに購入に踏み切れます。

手元に資金を残して将来の出費に備えられる

頭金なしで住宅ローンを組むと、手元に資金を残せるというのも魅力の1つです。たとえば、子どもの教育資金やマイカーの購入資金を確保しておけます。将来的に大きな出費が見込まれるご家庭の場合、頭金なしで住宅ローンを借り入れたほうが経済的に安定するケースもあります。

住宅ローン控除を最大限に活用する

住宅ローンで注文住宅を購入した場合、条件によっては住宅ローン残高の0.7%を所得税から控除できます。住宅ローン減税は最大13年間続くので、新築住宅を購入予定の方にとっては魅力的な制度です。頭金が少ないほど住宅ローンの借入額が大きくなるため、控除を最大限利用できる可能性が高くなります。(2024年9月現在)
(参考:国土交通省「住宅ローン減税」)


頭金なしで住宅ローンを組むデメリット

頭金なしで住宅ローンを組むメリットがある一方で、留意しておきたいデメリットも存在します。住宅ローンの支払い期間は長いため、マイホーム購入後に後悔しないよう事前に理解しておきましょう。

金利は高くなる可能性がある

頭金なしで住宅ローンを組む場合、融資率(借入額を住宅の取得にかかる金額で割ったもの)が高くなるため、借入金利も高くなる可能性があります。金融機関の多くは、融資率が9割を超えると金利を高く設定しています。頭金なしで住宅ローンを組む場合は、金利は高くなる可能性があることを覚えておきましょう。

返済リスクが生じる

頭金なしで住宅ローンを組むと金利が高くなる分、返済総額は増えてしまいます。月々の返済額が多くなり、「ギリギリなんとかなる」と思っていても安心はできません。どの家庭にも予期せぬアクシデントによって経済状況が一変する可能性はあるため、返済不能に陥るリスクを少しでも減らせるように計画を立てる必要があります。

住宅ローンの審査が厳しくなる

住宅ローンは借入時に金融機関の審査があり、返済能力の有無が厳しくチェックされます。金融機関は担保となる物件の評価にも注目しますので、人気のあるエリアや売却時に価格が落ちにくい住宅でない場合はより注意が必要です。年収に対する年間返済額の割合を少なめに設定するなど、審査に通りやすくする対策を講じましょう。

【参考記事】
住宅ローンの審査は事前審査と本審査の2段階!落ちる原因と対策を徹底解説

オーバーローンになりやすい

オーバーローンとは、購入する住宅や土地の価格をローンの借入額(残高)が上回る状態です。頭金を入れないと借入額が大きくなるため、マイホームを売却しても住宅ローンの残債を支払えない可能性があります。住宅ローンの残債を一括返済しなければ、住宅の売却は成立しないルールなので要注意です。

頭金なしの住宅ローンは無理のない返済計画が重要

住宅ローンを無理なく返済できる額は、一般的に手取り年収の25%が目安とされています。以下の表は、フラット35を利用した場合の借入可能額と月々の返済額の一例です。

年収 借入可能額 月々返済額
 300万円  2,264万円  7.5万円
 400万円  3,521万円  11.7万円
 500万円  4,402万円  14.6万円
 600万円  5,282万円  17.5万円
 700万円  6,163万円  20.5万円
 800万円  7,043万円  23.4万円
 900万円  7,924万円  26.3万円
(金利2%・35年ローン・元利均等・他の借入金ゼロで試算)

上記は頭金なしでの試算のため、金利は高めに設定しています。借入可能な金額であって、無理のない返済額ではないので注意しましょう。

住宅購入時に頭金が用意できない人の多くは家計の見直しが必要です。現在の生活で貯金する余裕がない場合は、借入額は少なめに見積もります。住宅購入後は、固定資産税や修繕費の準備も必要です。賃貸住宅にお住いの場合、月々の返済額が家賃を超えないように設定するといいでしょう。

また、事故や病気、収入の減少など不測の事態に備える必要もあります。最悪の場合を想定し、保険への加入や半年分の生活費確保もおすすめです。金利に関しても、いつ上昇するかわからないことを前提に固定金利を選ぶ方法もあります。


年齢別に見る頭金なしで住宅ローンを組む際の注意点

頭金なしで住宅ローンを組む場合、年齢によって留意すべきポイントが異なります。35歳・45歳・50歳以上の年齢層を例に挙げ、それぞれの注意点を解説しましょう。

35歳

住宅購入時に35歳前後の方は、将来のライフプランを詳細に考える必要があります。結婚や転職、子どもの教育について具体的に整理してみましょう。同時に、これまでの貯金状況を振り返り、定年までに無理なく返済できる額を検討します。

45歳

住宅購入時に45歳前後の方は、子どもの教育費や老後資金が住宅ローンに与える影響を検討するのが大切です。まとまった支払いに備え、慎重に返済プランを立てます。返済期間を長めに設定し、繰り上げ返済を考えておくと安心です。

50歳

住宅購入時に50歳以上の方は、将来の収入の変動や定年後の生活を見据えて借入額を検討する必要があります。無理のない返済設定や健康問題に備えるための対策も重要です。金融機関によっては返済期限が設定されている場合もあるので、事前に確認しておきましょう。

【関連記事】
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頭金なしの住宅ローンは将来のリスクも検討しよう

頭金なしで住宅ローンの借入はできるものの、借入額や金利が高くなるというデメリットがあります。無理なく返済できるかどうか、将来的なリスクに備えたシミュレーションが必要です。住宅購入後の生活を具体的に想像し、頭金なしでの住宅ローン契約が適切かを慎重に検討しましょう。

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